気になるニュース173回「命を預かる」

【問】

1886年、和歌山沖でイギリスの貨物船が座礁、沈没し、日本人乗客が全員死亡するという事件が起こりました。不平等条約改正を求める国民の声が大きくなるきっかけとなったこの事件を何といいますか。

【答】

ノルマントン号事件

ノルマントン号に乗っていた日本人乗客25名は誰一人助かりませんでした。
しかし、イギリス人船長を含む乗組員26名は、すべて救命ボートで脱出し無事でした。
船長たちが避難誘導をせずに、自分たちだけが逃げ出したのではないかといわれましたが、裁判ではイギリス人船長は裁判で無罪となりました。

当時、日本は「治外法権」を認めていたため、日本の法律で船長を裁くことができなかったのです。
この後、不平等条約の改正を求める国民の声が高まり、1894年に外務大臣の陸奥宗光がイギリスとの交渉で治外法権の撤廃に成功しました。
それでも、亡くなった人の命が戻るわけではありません。
一番大切なのは、乗客の命を預かっている船員の責任感ではないでしょうか。

先日、韓国のフェリーが沈没し、修学旅行中だった高校生を含む多くの乗客が犠牲になるという事件がありました。
ところが、船長や航海士、機関士などの多くの乗組員はいち早く脱出して無事でした。
もちろん、最後まで乗客の誘導をしていた船員もいたそうです。
人間は弱く、自分のことを第一に考えるのかもしれませんが、乗客を誘導し続けた船員のように、自らの仕事に誇りと責任を持つべきではないでしょうか。
事故で亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。

(皆実教室M)