それでもI will be…(284)

前回に続き、富士山登山体験記でございます。
さて皆さん、登山と言えば当然足で登るものとお考えですよね。
私もそう思っていました。
しかし、富士山はちがっていました。
8合目、私たちの前に広がったのは、両手で岩場につかまりながら登っていく人たちの姿でした。
要所要所につかまるための杭は打ち込んであるのですが、その杭同士をつなぐロープのようなものは一切ありません。
ですから、前傾姿勢を保てずに後ろ向きに体重をかけると、冗談抜きで落ちかねないのです。
2人して顔を見合わせましたが、70歳近くに見えるおばあちゃんが登っていくのを見ては負けていられませんでした。
この難所を越えたところで、一気に手持ちの水分が半分になっていました。
疲労も足だけでなく手にも回ってきました。
ここでさっきの元気なおばあちゃん一行は山小屋で宿泊の手続きに入っていました。
この時点で午後1時半。

私たちは少し休憩を挟んで、再度アタック開始です。
ここで少し雲の切れ間に入って日光が差したので、少し元気が出たのを今でも覚えています。
同時に、謎のタンクトップに短パンの20代前半の青年が駆け上がっていった衝撃も覚えています。

そんな笑いもつかの間、本当の試練は9合目に待っていました。
距離としてはあと少しなのですが、険しさが半端ではないのです。
7~8合目にあったような岩場が私たちを待ち構えていました。
しかも、険しさは先ほど以上でした。
所々に先ほどはなかったチェーンがあることが、逆に険しさを物語っていました。
声を掛け合いながら、どうにか岩場を乗り切ると、残る道は急傾斜でこそありますが、手は使わずに登れる道です。
ただし、大きめの段差の岩が階段のようになっており、最後の最後で脚力勝負になります。
ここで人生初めての体験でしたが、膝が笑い始めました。
空手道の練習で足が痛いことや、だるいことは幾度もありましたが、痙攣までおこしたのは後にも先にもこの時だけでした。
杖をフル活用しながらどうにか登りきったその先には、すさまじい光景が広がっていました。
文章ではとても表現し切れませんが、絶景とはまさにあのことです。
遠くに見える町や山、ここまで登ってきた富士山の登山道。
ここまでの苦労が報われる気がしました。
昨年私は、スカイツリーにも登りましたが、この時の富士山からの光景は比べものになりませんでした。
たしかに、ここからの御来光は素晴らしい価値があるでしょう。
しかし、時間もお金も有限です。
ついでに若さも有限なので、もう1回挑戦するのは勇気がいるなあ……。
午後5時、達成感で疲れも少し取れた気がした私たちは下山の途につこうとしたのですが……本当の試練はここからでした。

(次回に続く 五日市教室T)