気になるニュース68回「ゼロへの前進」

090306.jpg【問】
アメリカのオバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領が「新戦略兵器削減(さくげん)条約」に調印しました。この条約の略称を何といいますか。


【答】
START(スタート)

1991年,アメリカとロシア(当時のソ連)は,ICBM(大陸間弾道ミサイル)・SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)・戦略爆撃機などの保有数を削減する「第1次戦略兵器削減条約(START-Ⅰ)」を結びました。
これは,史上初めてのことで,世界は核軍縮へと動き始めました。
さらに2002年,アメリカとロシアは,核弾頭の上限を2200発とする「戦略攻撃能力削減条約(モスクワ条約)」に合意しました。
2200発でも多すぎる気はしますが,核軍縮への歩みが続けられることが大切なのです。
そして今年4月8日,チェコの首都プラハで,アメリカのオバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領は,2009年12月に失効したSTART-Ⅰの後を受ける「新戦略兵器削減条約(新START)」に署名しました。
この新条約によって,両国は戦略核弾頭を1550発に削減することになりました。
2009年4月に,同じプラハでオバマ大統領が提唱した「核兵器なき世界」へ向けての前進といえるでしょう。
もっとも,この新条約では,アメリカの「ミサイル防衛(MD)計画」については触れられておらず,ロシアのメドベージェフ大統領は「アメリカのMDが脅威になれば,新STARTから離脱する」と警告しています。
さらに,条約批准(ひじゅん…国が最終的に認めること)のためにはアメリカ議会の承認も得なければならず,まだまだ前途多難といえそうです。
核をめぐるその他の動きとしては,12日にアメリカのワシントンで「核安全保障サミット」が開かれました。
このサミットでは,核物質の管理体制を早急に築くことが合意されました。
これは,過激派などによる核テロを防止するため,世界の国々が利害を超えて協力していこうというものです。
しかし,唯一の被爆国である日本の存在感は,残念ながら薄かったようです。
ワシントン・ポスト(アメリカの新聞)はコラム欄で,鳩山由紀夫首相を「豪華ショー(サミット)の最大の敗者」と酷評しています。
オバマ大統領との会談がかなわず,サミットでも目立った活躍がなかったためでしょうが,普天間基地移設問題に解決の光明をみいだせず,発言が一定していない鳩山首相に対する,アメリカ側の不信感の現われだと見る向きもあります。
政治家には限りませんが,言葉の重さというものを今一度考えなければならないような気がします。
(皆実教室M)