それでもI will be…(249)

「マルハナバチはなぜ飛べるのか?」
この命題は、長い間、航空力学上の難問でした。

たしかに、その身体の大きさに比べて、翅が小さすぎるんですよね。
少なくとも、同様の形状で飛ぶ機械を人間は作り出せないでしょう。

要するに、マルハナバチの翅が作り出す揚力では、その大きな身体を支えきれない、すなわち、理論上、彼らは「飛ぶことができない」はずの昆虫だったわけです。

にもかかわらず、目の前をブンブン自在に飛びまわるマルハナバチに対して、昔の科学者たちはあるひとつの解答にたどりつきました。

「マルハナバチはなぜ飛べるのか?」

「それは、マルハナバチが、自分が飛べないということを知らないからだ……」

初めてこの話を聞いたとき、私は「なんて美しい解答なんだろう」と感動に胸を熱くしたものです。
そして、人間も同様、自らの限界を意識しない限りは、どこまでも高く、自在に飛ぶことができるのではないかと…そう思ったのです。

※美しい物語の終わりにこんなことを書くのは無粋なのですが、人間の偉大な科学は、マルハナバチが飛べる理由を既に解明しているとのこと。ちょっと残念でもあります。

(己斐教室S)