気になるニュース30回「ロシアと戦争する国は」

戦車.jpg【問題】
ロシア連邦の隣にある国が、同国内の自治州の独立紛争をきっかけとして、ロシアと交戦状態になりました。その国とはどこでしょう?



【解答】
グルジア

グルジアは以前、旧ソビエト連邦の共和国の一つでした。
1991年のソ連解体により独立し、1995年からは国名を「グルジア」としています。
住民の多くはグルジア人ですが、アルメニア人やロシア人、アゼルバイジャン人、オセット人、アブハズ人など多数の少数民族が居住しています。
そのためグルジアの中には、国内にアブハジア自治共和国、アジャリア自治共和国を抱えており、また、オセット人が自治権を要求して樹立した「南オセチア自治州」もあります。
今回の紛争は、グルジアからの(?)独立を求めている「南オセチア自治州」へグルジア軍が軍事侵攻をしたことに対して、ロシア軍が報復攻撃を行ったことがきっかけでした。そして、ロシア軍が南オセチア自治州内だけでなく、グルジアの首都トビリシなどを空爆したため、市民を含む大勢の死者が出ました。
現在のグルジア大統領であるサーカシビリ氏は、アメリカのコロンビア大学で学んだこともあり、親米派の大統領です。
グルジアは現在、 NATO(北大西洋条約機構)入りを目指し、ゆくゆくはEU加盟も視野に入れているようです。
今回のロシアの軍事行動は、アメリカやEUに接近するグルジアを威嚇(いかく)する目的があると考えられています。
カスピ海周辺には原油や天然ガスなどの資源があり、これらのパイプラインを通すルートとして、グルジアは戦略的に重要な価値を持っているからです。
フランスのサルコジ大統領が停戦のための仲介を行い、一応グルジアとロシアは停戦で合意しましたが、依然として両国間の緊張は続いています。
アメリカが人道的支援として米軍をグルジアに派遣していますから、ロシアの対応もいきおい強硬なものになる可能性が高いと思われます。
実際に、8月26日にロシアは、南オセチア自治州とアブハジア自治共和国を国家として承認することを発表し、さらに同自治州や共和国がグルジアから攻撃された場合、ロシアが防衛に協力することを表明しました。
また、南オセチア問題を発端として、欧米との関係が悪化していることに対しても、「冷戦状態をも辞さない」と宣言しています。
8月29日にロシアとグルジアは外交関係を断絶しました。
一方、ウクライナのユーシェンコ大統領は、南オセチア自治州の独立を承認しない方針を明らかにしていますし、EU各国も独立を承認するとは考えづらい状況です。
1989年のマルタ会談で東西冷戦の終結が宣言されてから19年。
社会主義国家であった旧ソ連の崩壊を経たのち、原油など資源高で豊かになり、現在は世界の強国に返り咲いたロシア。
イラク戦争による疲弊(ひへい)や、サブプライムローンによる不況で経済的にも苦しくなり、世界におけるリーダーシップにかげりが見え始めたアメリカ。
この旧二大国が綱引きを始め、さまざまな国がそれに振り回される。
今回のことがきっかけで、冷戦時代に逆戻りしてしまうとしたら、あまりに悲しい現実ではないでしょうか。
日本国内でも、もっと関心を持って欲しい問題だと思います。
(皆実教室M)